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耐震改修促進法はこう読み解く!

耐震基準法の概要

耐震改修促進法(建築物の耐震改修の促進に関する法律)は、阪神大震災の教訓から、1995年12月25日より施行されている法律で、地震による建築物の倒壊等の被害から国民の生命、身体及び財産を保護するため、建築物の耐震改修の促進のための処置を講ずることにより建築物の地震に対する安全性の向上を図り、公共の福祉の確保に資することを目的としています。

この法律では既存の建物のうち、特に多数のものが利用する一定規模以上の建物を「特定建築物」とし、その所有者は、建築物が現行の耐震基準と同等以上の耐震性能を確保するよう耐震診断や改修に努めること(努力義務)が求められています。

また、耐震改修計画が同法に適合しているかどうかの認定を受けると、耐震改修に関する一定の規制緩和や公的融資の優遇などを受けられるなどの緩和措置等も規定されています。

この耐震改修促進法は2006年に改正され、向こう10年間で耐震化率90%という具体的な数値目標を掲げました。その実現のために建物の所有者が「自らの問題」、「地域の問題」として取り組む必要が指摘され、特定建築物の対象も拡大されています。

また、目標達成のため、特定行政庁による「耐震改修促進計画」の策定が義務づけられ、2008年4月には全ての都道府県で計画の実施が始まっており、順次、市区町村での策定や実施が進められていきます。

さらに2013年5月22日には改正耐震改修促進法が成立し、耐震診断が義務付けられました

 

改修法の考察ポイント

ポイント①

現実には指針などにより1981年以前の「旧耐震基準」がその主な対象になりますが、促進法では「現行の耐震基準」という言い方になっており、今後の基準法改正への追従性も加味されています。また、偽装や違法建築などもその対象に含まれます。

ポイント②

「耐震化率90%」を達成するには早いペースで改修・建て替えを進める必要があるとしており、そのために改正法では耐震改修が義務づけられる建物の範囲を拡大し、診断や改修については自治体による指示や立入検査が可能としています。さらに、これに従わない場合には所有者名を公表できるようにするなど、制度の充実を図る一方で、建物所有者が耐震化を進めるための支援と緩和に関しても拡充し、行政、民間が一体となって耐震化に取り組むことを求めています。

ポイント③

計画的な耐震化を推進するに当たって、国が建築物の耐震診断・改修に関する目標設定や技術上の指針などを盛り込んだ基本方針を策定(国土交通省告示第184号)。これをもとに、都道府県が耐震診断・改修の具体的な目標や地域の実情に応じた耐震改修促進計画を作成することを義務としています。市町村には政令指定都市であっても策定義務はありませんが、都道府県の促進計画の下、それぞれの計画を立てるよう努めることとされています。

このように、自治体、それも都道府県における「耐震診断・改修の促進のための施策」が大きく増大しており、実質的には耐震改修を促進させる主体は都道府県になったとも言えます。その一方、国民に対しても地震に対する建築物の安全性を確保することを「国民の努力義務」とし、それぞれの役割に応じて数値目標の実現に当たることとしています。

ポイント④

特定建物は大きく3つに分けて定義されました。

1. 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、老人ホームその他多数の者が利用する建築物

2. 火薬類、石油類、その他政令で定める危険物であって政令で定める数量以上のものの貯蔵場又は処理場の用途に供する建築物

3. 地震によって倒壊した場合においてその敷地に接する道路の進行を妨げ、多数の者の円滑な避難を困難とするおそれがあるものとして政令で定める建築物で、都道府県の耐震改修促進計画に記載された道路に接するもの

特定建築物のうち一定規模以上のものは、所轄行政庁が「所有者に対して必要な指示をすることができる」建物が規定されており、指示・立入検査の対象とされています。指示対象となる特定建築物については、耐震診断、耐震改修等の指示に正当な理由無く従わない場合、それが公表されるという規定が盛り込まれています(法第七条)。

 

耐震診断義務化と耐震化促進のための規制強化

病院、店舗、旅館等の不特定多数の者が利用する建築物及び学校、老人ホーム棟の避難弱者が利用する建築物のうち大規模なものには耐震診断が義務付けられました。

これと共に、

●地方公共団体の指示に従わない特定建築物を公表(法改正)
●倒壊の危険性の高い特定建築物については建築基準法により改修を命令(建築基準法)

といった規制が強化されました。

できるだけ早めに耐震診断と改修を実施しましょう。

 

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